探偵事務所と興信所の違い

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一般人が自分では手に負えない調査を第三者に依頼しようと思えば、おそらくインターネットや電話帳で業者を調べることになります。ところが同じようなサービスを提供しているのに、あるところは○○探偵事務所、別のところは△△興信所と名乗っています。宣伝文句を読んでも両者の違いはよくわかず、結局、依頼をためらってしまうケースもあるかもしれません。

では両者は一体どう違うのでしょうか。まずは仕事内容の面から見てみましょう。一般的に、興信所とは企業の信用調査や人事・雇用の調査など、主に企業を調査対象とした依頼案件を扱う専門家のことです。これに対して、探偵事務所とは浮気調査、素行調査、身元調査、あるいは人探しなど、主に個人を調査対象とする依頼案件を主に扱う専門家を指します。

探偵事務所も興信所も現代ではほぼ同じサービスを提供しています

どちらも明治期に始まったビジネスなのですが成立背景が異なります。探偵は警察OBが始めた個人向けの調査サービスであるのに対し、興信所は日銀OBが企業の信用調査を念頭に立ち上げた、もっと公的性格の強いサービスなのです。

探偵の「偵」の字は「人の様子をうかがう」という意味です。探偵とは、人の様子をうかがい、事実を探り当てる行為ということになります。一方、興信とは「信を興す」こと、もっとわかりやすく言えば、取引しようとしている相手企業に、倒産のリスクはないか確認してから「信用を形成していく」という意味になります。

しかし2007年に施行された探偵業法では、興信所を含めて探偵とする、というくくり方をしています。どちらを名乗ろうと公安委員会に届け出る義務を負う点では同じ資格です。

仕事の実情面で見ても、重なる部分が非常に大きく、探偵が企業の経済案件を扱うこともあれば、興信所が結婚調査などの個人調査を行うことも珍しくありません。調査で知りえた情報を外部に漏洩しないという、いわゆる守秘義務の厳守の面でも共通しています。
探偵事務所と興信所の違い

成り立ちの違いをもう少し掘り下げてみましょう

日本最初の探偵と言われているのは、1895年(明治28年)に探偵事務所を開設した岩井三郎という元刑事です。岩井は尾行・張り込み・聞き込み・内偵といった刑事時代の捜査方法をそのまま調査に活かしました。彼の作り上げた基礎的手法は現代の探偵業務にも受け継がれています。

一方、興信所は日本経済でも現代型の民間企業間ビジネスが主流となり始めた時期、1892年(明治25年)に、日本銀行理事の外山修三が大手銀行団と共同出資で大阪に設立した「商業興信所」に端を発します。4年後には東京に、同様の後ろ盾を持つ「東京興信所」が開設されました。どちらも日銀肝いりの公的色彩の強い調査組織でした。

1890年(明治33年)には、後藤武夫という人が初の民間会社として「帝国興信所」を創業します。当初は、先行2社に太刀打ちできず本業のみでは経営が成り立たないため、探偵の仕事領域にも進出しました。

しかし日露戦争後の起業ラッシュを追い風に本業が軌道に乗ると、企業信用調査専門に復帰します。この会社が発展して現在の帝国データバンクとなったのです。

探偵事務所のルーツは刑事、興信所のルーツはビジネスマンです

成り立ちの違いは調査手法の面でも違いを生み出しました。探偵事務所は刑事がルーツなので、尾行や内偵、張り込みや聞き込みといった、いわゆる「泥臭い」調査を厭いません。そうしないと依頼者が知りたい本当の情報が得られないからです。

それに対して企業の信用調査という仕事に向いているのは経済人、現代風に言えばビジネスマンといことになります。彼らは必ずしも秘密裏に動く必要がなく、公開の財務情報を裏付けるために経営者や関係者にオープンな面談を申し込むことも当然となります。

日本では欧米に比べてこのような調査を行う業者の社会的地位は高くありません。アメリカなどはライセンス制が徹底され、ある程度の調査権限も与えられていますが、日本の探偵や調査員は何の権限もなく、個人のスキルと経験で依頼をこなしています。

ですから、現在ではほぼ同じサービスであると言っても、成り立ちの違いからくる得意不得意はあるかもしれません。興信所とわざわざ名乗る業者には、財務関係書類に強いというプライドがあるでしょうし、探偵事務所ならハイテク機材なども駆使して「泥臭い」調査技術を磨いていることでしょう。

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